読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

友人達との飲み会

昔からそうだ。
楽しいことがあった次の日はその反動で、胸が苦しく、絶望的な気分になる。過ぎ去りつつある現在をどうあがこうとも止めることはできないのだ。あらゆるものは前に前に前へと流されていく。
新宿で、大学の友人達と飲んだ。3年間顔を合わせ、講義を受けていたクラスの人達だ。その中には卒業してからまったく顔を合わせてない人もいた。ほとんど毎日顔を合わせていたのに、不思議なものである。みんなそれぞれ忙しい。
洒落たイタリアンの店でピザやパスタ、ワインにビール、カクテルと次から次へと料理が運ばれてはお腹の中に入っていった。
それぞれ皆近況を報告しあった。
ある友人の1人に声をかけ「タバコを吸いに行こう」といった。店を出て、階段を登り、ビルに備えつけられた喫煙所のブースでタバコを吸った。初めは、その友人の知り合いのバンドがテレビに出たという話から始まり、そのバンドのメンバーの1人が自殺してしまったことを彼は話した。

「そういえば、あいつはなんで死んだんだろう」
「おれにもわからないな。でもヘリウムガスを吸って死んでしまったみたいだ」
「そうか。ヘリウムガスでひとは死ぬんだな」
「発見された時、顔がぐちゃぐちゃだったみたいだ。葬式の時にも、顔は見せなかったよ」
「イメージを崩さないために」
「格好良かったからな。実はおれも一度だけ心療内科にいった」
「なんで?」
「とてつもなく落ち込んだ時があって、自分でもやばいと思ったから。でも薬だけ渡されただけで何の解決にもならなかったし、薬は飲まなかった」
「あれを飲んだら、戻ってこれなくなるかもな。そんな酷い状態だとは思わなかったな。あまり周りのこと気にするなよ」

喫煙所から外に出た。もう死人のことは頭からどこかにいってしまっていた。死んだら終わりだ、何もかも。

二軒目はまた違う店に入った。
安酒とトマトにナス、卵焼きに、適当なつまみの数々がでてきた。その店で何を話していたのかはあまり覚えていない。その店を出ると、女性はみな家に帰っていった。明日仕事のあるひと、予定のあるひと、それぞれ忙しいみたいだった。

結局、野暮ったい男5人が残った。

三軒目は相席居酒屋に入ることになった。ぼくはあまり気乗りはしなかったし、恋人に失礼なことをしてる、という罪悪感を拭うことができなかった。店に入る前に、泥酔した男が1人出てきて、階段にゲロを吐いた。それを見て、周りにいた人達は彼のことを嘲笑った。「アホだな、こいつ」

店に入り、席についた。女2人が席に座っていた。どちらも可愛くなかった。医療系の専門学校に通っていて、相席屋にはよく来るみたいだった。ぼくたちで4組目だったらしい。そりゃそうだ。ぼくは二言三言喋り、ビールとするめを食べていた。するめを食べると、左に座ってた女が「面白い」と言った。「するめ食べてるだけなのに?」「そう」「失礼だな」とぼくは返した。左に座ってた女が「早く結婚したい」と言った。ぼくは心の中で、こんなところに来ないで真面目に相手を探せばいいのに、と思った。どっちにしろ、こんなところで遊びに来てる女にロクな奴はいないし、相手にもしないだろう。そんなことを考えてるとどんどん落ち込んでいくのがわかった。自分の中の女性対する像が壊れていくのがわかったからだった。周りを見渡せば、ごく普通の静かそうな女性も座っていたりして、ますます落ち込んだ。薄明かりのライトが、タバコの煙を照らしていた。結局、連絡先は交換しなかった。

四軒目はカラオケに行った。
朝の5時まで歌った。
朝の新宿はとても静かだった。
通りにひとはおらず、明かりのついていないビルが立ち並んでいた。ショーウィンドウにはライトに照らされたマネキンが立っていて不気味だった。

富士そばに入り蕎麦を食べた。

「おいしくないな」

店を出た。
駅の構内に入り僕らは握手をして別れた。
「またやろう!」

次はいつ集まれるのだろう?
ぼくは椅子に腰掛けて、1人、苦しんでいた。