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セックスについて話を始める女にウンザリした話。

喫煙所でポケットからマルボロを取り出し、安っぽい短いライターで火を点けて、深く煙を吸い込む。毒を肺の隅々にまで行きた渡らせ、あらゆる、色素を黒くさせたあと、煙を吐き出す。吐き出された煙は最初こそ形を成しているが、少し経てば、霧散してしまう。

なにも考えない時間を作るにはタバコは持ってこいだ。僕はこの空白な時間をとても大切にしているのだが、ある、二人の女性が僕の前で露骨なまでの性的な話をし始めたせいで、気分は最悪になってしまった。喉の奥に指を突っ込んで、体に入ってきた汚物を吐き出してしまいたいくらいだった。

2人は、友達と言えるほど仲良くもなく、かと言って完全な他人というほどでもないような関係だ。

1人の女性は数ヶ月前に彼氏と別れたことを話し、もう1人はガンジダになったせいで、セックスが出来ないという話をし始めた(もちろん、彼女の恋人とである)。

彼氏と別れた話をした女は「もう、私、恋人なんて作らないわ」と諦観しきった視線を地面に落としながら話しを始めた。

彼氏と別れたあと、彼女は恋人のいる男を破綻させるため、性的な関係を持つことに力を注いでるらしい。

「この前さ、渋谷のクラブから出て来た適当な男に声をかけてさ、ホテルに行って、セックスをした。大抵の男ってのは、性的な欲望には敵わないもんなんだね。たとえ、そいつに彼女がいたとしてもさ。とりあえず、一回目の性交渉が終わったあと、都合の良い時に呼び出してくれたら良いよ、って電話番号を渡したんだよ。そしたら、あれよあれよと電話がかかってきて、今ではもう4回以上はセックスしたよ。んで、私からも電話をするようになったんだけどさ、ちょっと彼女と会う約束をしてるから無理って断れられたから、頭に来てさ、彼に何回も電話をかけまくったら、キレてやんの、みみっちい男だよね、ホント」

と、話の内容は大体こんな感じだった。もうとにかくこういう類の話をされるのはうんざりなので、僕は彼女の顔に意図を汲まれないように煙を吐き出してやった。そいつは年がら年中、セックスのことばかり考えてるような奴なんだよ。たとえ、相手がちょっとブサイクであったとしても、ペニスだけは別で、それだけ独立してるみたいなことを言い出しかねない。まあ、その手の女に引っかかる男も馬鹿なのだが、僕にとっては不誠実極まりなく、また、強烈に汚い話だった。

セックスのセという字が出て来た時点で、胃液が逆流してしまいそうだった。そんなのはさ、プライベートの問題として心の中に閉まっておいて欲しいんだよ、ホント。

もう1人のガンジダ感染した女性は、片方の女が話をしている間、しょっちゅう股の間に手を出し入れし、内ももを掻いていた。生でやったら、感染した、ということだった。僕にとってはどうでも良いことだ。第一、あんたのセックスライフに興味はない。

どうして彼女達がそういう話をするのかというと、僕がなんの不愉快な表情を浮かべることなく耳を傾けてるせいだ。だから、僕にも責任はあるのかもしれない。第一、話をしている時にどんなことを返せば良いか分からないから、ただ聞くだけしか出来ないのだ。んで、あとになってこうやってあーだこーだ文章を打ってるわけだ。まあ、そんなことはどうだって良い。

とにかくそのガンジダに感染した女性は、産婦人科の医者に「いつ性交渉を持てますか」と聞いたそうだ。医者もどう答えて良いのか分からなかったのだろう。「パートナーと話し合ってください」とのことだった。それをその女性は嘲笑う。

「パートナーと話し合ってだってよ、はは」

もう片方の女性が「コンドーム付けたら?」と言う。

「ダメ、それは駄目。全然、気持ちよくない。薄さ0.03ミリの壁は厚い」と冗談を言って、二人で笑い合っていた。

やれやれ…そのガンジダの女性は以前、家出娘を演じて、駅前の壁にもたれ座って、誰かに声をかけられるのを待っていたことがあった。それも休日前の金曜日の夜に。

サラリーマンの1人が声をかける。
「ねえ、大丈夫?なにかあったの?」といった具合にね。女はこういう。「今日は家に帰りたくない」と、まあ、演技してるわけだ。


そうやって次の日には、二人はホテルから出てくる。ささっと動物のような性交渉を済ませてね。

ホント、ウンザリだ。
こういう話を聞きたくもないのに、聞かされるから、僕はますます人と関わりたくなくなってしまうんだろうな。

世の中、汚ねぇよ、マジで。