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Where is she?

僕が初めて大学に行った時のことを覚えている。

僕の大学では英語の他にもう1つの言語を選択しなければならない。

韓国語・中国語・スペイン語のいずれかを選び3年間勉強をしろということだ。

その日、僕は選択言語のガイダンスを受けに初めて大学に行ったのだった。

掲示板を見てもガイダンスが行われる教室がどこなのかさっぱりだ。

一体、僕の選択言語のガイダンスはどこでやると言うんだい?

 そう思いながら、ぶつぶつ頭の中でどこだどこだどこだと考えながら歩き回っていると、ある女の子が僕に話しかけてきた。

「ねえ、私の教室どこか知らない?」って。

知らないよそんなの。僕が知りたいくらいだ。

「君の教室がどこなのかは分からない。きっと掲示板に載っているかもしれない」

と言って、僕は彼女を掲示板の所まで案内した。

彼女との出会いは、まるで、村上春樹の小説のようだった。

掲示板まで行って、僕は彼女のガイダンスのクラスを教えた。

彼女には彼女のガイダンスがあり僕には僕のガイダンスがあるのだ。

「ああ、ここね、分かったわ。ありがとう」

「あ、でも。番号を覚えてもさっぱりだ。僕もさっきここで自分の教室がどこでやってるのか見たんだけど、いかんせんキャンパスが広くてさ、何がA棟で何がB棟なのかさっぱりなんだ」と僕は言う。

あんたもマップが読めない人ね、と言って彼女は僕の教室を一緒に探してくれた。

教室はもちろん存在していたし、中ではガイダンスが開かれていた。

「おっけ、ありがとう」と僕は彼女に礼を言う。

彼女も「ありがとう。また」と言って礼を言い別れた。

 

それから彼女とは会わなかった。

大学に入学して1ヶ月が経った。

ある社会学の授業で、僕は大遅刻をしてしまった。

先生が僕に嫌味を言ってくる。「もう、出席票は配り終わったわよ」って。

僕は空いている席を見つけ、窓際の席に座った。

(出席票が目的なんじゃない。僕は社会学の授業を受けにきたんだ)とぶつぶつ僕は言う。僕は少し苛々するとぶつぶつ独り事を言う癖があるのだった。

となりの女性が僕を見てきて、腕をつつく。

(なんだよ、この女)と思って彼女を見ると、大学初日で会ったあの女の子だった。

 

 「元気?」と彼女は小言で言ってきた。

「元気だ。ガイダンスは出れたのかい?」

「もちろん、出れたわよ」

「まさか、この授業を取っているなんて」

「あまり面白そうな授業が無かったからね」と言って彼女は笑う。

 

授業が終わって僕は彼女にメールアドレスを交換しようと言った。

「ごめんなさい。携帯は捨ててしまったの。めんどくさくて」

「なんだって?」と僕は聞き返した。

「携帯は捨てたのよ。面倒だから」

「君は少し変わってるね」

「そう?」と彼女は言った。

「おっけ。分かった。直接話しかけるよ」と言ってその日は別れた。

 

それから僕は社会学の授業が終わるたびに彼女を昼食に誘い、彼女もその誘いに乗ってくれた。テーブルに座りながら僕と彼女は色んな話をした。ニーチェやカントやドストエフスキー川端康成やそういったもの。お互いの境遇についても話し合った。

 

半年が過ぎ、1年が過ぎ、僕と彼女のそういったやり取りは続いていた。

ある日、僕は彼女がライブラリーから出てくる姿を目撃して声をかけた。

「この大学辞めることにしたわ」

「なんだって?」僕は驚いてもう一度聞き直した。

「大学辞めるの。」

「それでどうするんだい?」

「イギリスに行くのよ。イギリスの大学に受かったから」と彼女は言う。

「イギリスだって?そしたらもう連絡取れなくなるじゃないか。君はほら、メールアドレスも持ってないし」

「そうね。まあ、またそのうちどっかで会えるんじゃない?」と彼女は言う。

それが僕が彼女と会った最後の日となり、最後の言葉となった。

 

メールアドレスは持ってないし、フェイスブックもやっていない。

彼女はいまどこでなにをしているんだろう?今でも時々、彼女のことを思い出す。

 

She was so mysterious.