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永遠の青春小説、キャッチャー・イン・ザ・ライ

読書 村上春樹

キャッチャー・イン・ザ・ライを読んだ時、僕は21歳でした。どうして17歳の時にこの本に巡り合わなかったのだろう、と読んだ後に後悔しました。本というのは、読むべき時期に読むべき本を読まないと理解も共感も薄くなり、味気ないものになってしまいます。例えば、80歳になったじいさんが17歳くらいの主人公の恋愛物語を読んでいて楽しいでしょうか。もちろん、楽しいと言う人もいるかもしれませんが、僕だったらツマラナイと思うかもしれません。だって、17歳をやり直したいと思っても永久にやり直すことは不可能なんですから。その逆もしかり。例えば、17歳の少年が80歳くらいの老人の小説を読んでいて面白いと思うかどうか。たぶん、何を言ってるのかわからないだろうと思います。あらゆる教訓や説教話を聞かされているようで退屈してしまうかもしれません。あるいは、1子ども向けの冒険小説。僕は小、中、高と本を一切読まなかった人間なので、これもかなり後悔しています。今は、児童文学も素晴らしいな、と思って読み返したりしていますが、僕が12歳だったらもっと本に肉薄していたことだろうと思います。ロビンソンクルーソー指輪物語ハックルベリーフィンの冒険、トムソーヤの冒険、あしながおじさんなど、読んでおけばよかったなぁ…と思います。

 
カラマーゾフの兄弟ならまた変わった読み方ができるかもしれません。子どもの視点、青年の視点、大人(親)の視点と三つの視点でこの小説を味会うことができそうだからです(実は、まだ読んでいません。24歳になったら読むつもりです。また、50歳くらいになったらもう一度読もうかと、その日を楽しみにしています)。
 
周り道をしてしまいました。何を書こうと思っていたんだっけ…そうでした、キャッチャー・イン・ザ・ライでした。この本は僕にかなりの衝撃を与えました。どのくらい衝撃を与えたかというと、ヘルマンヘッセの「車輪の下」と同じくらい衝撃的でした。両方の小説の主人公の年齢は同じくらいだったと思います。
 
ストーリーは、神経症っぽいおぼっちゃまのホールデンという主人公が、あちこち移動していくという物語です。彼の目に映るものは全てインチキに見える。といった感じでしょうか。
 
この小説の何に惹かれたかと言うと、文体です。文体です、って言っても翻訳しか読んでないから詳しくはわからないんだけど、説明的ではないところが特に気に入りました。小説というのは、「自我」が揺さぶられないことには話が始まりません。この自我を揺さぶるものは、社会や経済、失恋だったり、あるいは、父と子の軋轢だったりもします。説明的な小説というのは、自我を揺さぶるものはいったい何なのか?が丁寧に書かれているように思います。
 
でも、この小説はそれらを直接は書いていない。17歳の主人公に何かが問題が起きているのはなんとなく分かる。自我を揺さぶる何かがあるのは分かる。でも、決定的な、根本的な原因は説明されていないし、わからない。学校なのか、親なのか、社会なのか、友達なのか、ぜんぜんわからない。ちょっと仄めかしては、はぐらかし、ちょっと仄めかしては、はぐらかし、とそういう焦ったさにも僕は惹かれます。
 
わかるのは、主人公のホールデンの目というフィルターを通した世界だけ。その目を通しながら、学校やホテルやバーや博物館やらをあちこち移動することによって原因が薄々分かってくる、そういう文体の手法を取っているのだと僕は思います。
 

小説の書き方が逆になっているとでも言いましょうか。行動には原因があります。原因をまず先に書いて、どう行動を取ったのか?が、まあ良く目にする小説かなぁと。

「ばあちゃんが死んだ(原因)」から「ばあちゃんとの懐かしい過去を思い出す(行動)」

「父と軋轢があった(原因)」だから「父を殺した(行動)」と言ったように。

でも、キャッチャー・イン・ザ・ライの場合、行動から書き始めます。行動、行動、行動、行動とそれを繰り返すうちに、原因が薄々と見えてくる。主人公のホールデンが狂い始めたのは、もしかしたらあの理由のせいじゃないだろうか、と読者の想像を掻き立てる。

だから、キャッチャー・イン・ザ・ライを読んだ後、あのなんともいえない不完全な感じがするのだろうと思います。なぜなら、何が原因なのかもわからないし、この先、ホールデンがどうなってしまうのかもわからないから。

まとまらん。

ということで、永遠の青春小説は、永遠に不完全なままの状態で終わるからこそ、これだけ全世界的に読み継がれたのだろうと、読者の数だけ色んなホールデンのその後の人生があるのだろうと思います。

僕の読書感想文は終わり。

 

 

 

 

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)

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