レコード屋でレコードプレイヤーを買うの巻。

僕の住んでる街にある小さなレコード屋に行った。店の中には60過ぎの店主が1人いて、レコードをせっせと磨いていた。

僕はただ昔(とりわけ60年代のロック)のCDを買い漁る為に入ったわけだけども、店の片隅にポツンと置かれたレコードプレイヤーに目がいった。クラシックなデザインで、繊細な針の下に大きなLP盤がゆっくりと回っていた。古ぼけたスピーカーからは、僕の知らないジャズの音楽が流れていた。

「これ凄く良いですね」と思わず店主に話しかけると、ニコニコしながら「これはね、今日入ったばかりなんだよ」と言って、レぐるぐる回る円盤に視線を落とし、そっとレコードプレイヤーに触れた。

「僕はこれがとても気に入りました。買っても良いですか」と言うと「良いとも良いとも。売り物だからね」と店主は答えた。店主は続けて「今は、インターネットで音楽なんて聴けるけど、レコードで音楽を聴くのも悪くないですよ。だって、これが音の始まりですからね」と言った。

「何か店にあるものを流しても良いですか」と聞くと「良いとも。そこのダンボール箱の中にレコードはたくさんあるから、一つ選んで持ってきなさい」と言った。僕はダンボール箱の中からレッドチェッペリンのレコードを選び、円盤の上に乗せ、針を落とした。

スピーカーからGood times bad timesが流れてきた。「レッドチェッペリンはガンガン音を鳴らさないとダメだ!」と店主が良い、スピーカーを最大まで上げた。小さなレコード屋の床や壁や天井が揺れ始めた。「すごいですね。初めてレコードプレイヤーで音楽を聴きました。昔の人もこういう風に聴いてたんでしょうね。」と僕は言った。その後しばらく、僕と店主は黙ってレッドチェッペリンを聴いた。

僕はふとジュゼッペ・トルナトーレの「海の上のピアニスト」を思い出した。これは、タイタニック号のような豪華客船専属の伝説のピアニストのお話だ。この映画は、とある音楽家が自分の愛用し続けた楽器を生活苦から売りに出すシーンから始まる。その店で、一枚の割れたレコードを見つけ、それを円盤の上に乗せる。するとかつて存在したピアニストの音楽が流れ始め、過去のシーンへと移っていく。とても感動する映画なので興味があったら見てください。

それで、レッドチェッペリンの一曲目が終わると、店主がレコードの針を元に戻し、レコードを丁寧に袋に詰め、プレイヤーの蓋をそっと閉じた。するとビルのオーナーがやってきて「おやおや、そのレコードプレイヤーもう売れたのかい?」と店主に話しかけた。店主は「そうなんですよ。幸先が良いですね」と言った。そして僕に向かって「今日でこの店は、ちょうど一周年なんです」と言った。

そんなことを言われると胡座をかいて腕組みをし、頭を捻り、自分の生活を見直さないといけないな、と思った。なんでかって?そんなこと言われたところで、考えはまとまらない。ぐるぐるぐるぐると円盤のように同じところを行ったり来たりして、出口から外にでたら前は入口で、入口は出口で、出口は入口のような感じだ。

それにしても、部屋にレコードプレイヤーが一台あるのって良いですよ、なんとなく。

終わり。