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失踪中の友人をついに発見した。

 友人の一人が年末に失踪した。そいつの名は通称キチガイで、ぼくと彼とは結構仲が良い。しょっちゅう会ってだらだら過ごしているし、富士山や丹沢の山を登りに行ったりもする。そんな彼が年末に姿を消す。

 そんな彼は今日、駅の近くにある個人経営の中古ビデオ店の丸椅子に腰をかけているのを僕が発見した。そのビデオ店は10年くらい前からあって、店内の9割がアダルトビデオ、そして残りの1割がコンドームやテンガやそういったものをあつかっている。ぼくの記憶が正しければ、最初はその店もごく普通のまっとうな店だった。古本を売っていたと思う。まあ、とにかくそんなことはどうでもいい。

 「そこで何してんだ?」

 「おう。携帯料金を払うのが面倒だったんだ」

 「そうか。年末年始にどこか行こうと思ってたんだけどな」

 「悪かった。2月初旬には払うから」

 

 そのあと、30分くらいダラダラと映画の話をした。

 「ジム・ジャームッシュダウン・バイ・ローを観たよ。なかなか良かった」

 「良かったなあれは。結局、イタリア人が良いクジを引いたよな」

 「奴だけハッピーに終わったよ」

 「俺は最初のシーンが好きだな。ある街からある街まで車を流すだけで良い、って言って相手をハメる奴」

 「そうじゃないと映画が始まらないしな」

 「確かにそうだ」

 

 かつてぼくと彼は同じバイト先だった。ぼくは淡々と学生生活を送り、卒業し、東京の会社に就職した。恋人だってできた。でもその間、彼は後ろにも前にも進めず、アルバイトをして過ごしている。ぼくと彼で違うのは、彼がたまたま貧乏な親を持ってしまった、それだけだ。

 

 「この前、ありえない額の請求がきた。焦ったよ」

 「それで?」

 「払ったよ」

 「いくら?」

 「180万円」

 「誰の借金?」

 「おそらく、死んだ母さんが借りたやつ」

 「また振り出しに戻っちまったな」

 「ああ、人生やってらんねぇよ」